京都議定書の温室効果ガス排出削減目標の達成に向け、費用対効果の高い対策を進めるための市場原理を活用した国際的仕組み。(1)排出量取引(ET emissions trading)、(2)共同実施(JI joint implementation)、(3)クリーン開発メカニズム(CDM clean development mechanism)の三種がある。(1)は先進国同士で排出量を取引する制度。(2)は先進国同士で排出削減や吸収のプロジェクトを実施し、投資国がその排出削減量をクレジットとして獲得できる仕組み。(3)は先進国と途上国が、途上国において共同で温室効果ガス削減プロジェクトを実施し、そこで生じた削減分の一部(認証排出削減量)を先進国が自国の削減量に充てることができる仕組みで、途上国の持続可能な開発への支援も目的。プロジェクトから生じる利益の一部は、途上国の温暖化への適応対策にも用いられる。京都メカニズムは国内対策に対し補完的であるべきとされている。京都メカニズムの排出量取引は国際排出量取引と呼ばれ、国内の事業者等を対象とした国内排出量取引制度とは区別される。2005年1月からEU域内排出量取引を導入したEUでは、エネルギー多消費型産業に排出枠を与え、超過した場合には二酸化炭素(CO2)1t当たり40ユーロの罰金が科されるなど、温暖化対策が経済システムの一部になっている。日本では企業の自主的な参加による国内排出量取引制度「排出量取引の国内統合市場の試行的実施」が、08年10月に開始された。