2010年10月に名古屋で開催されたCOP10で採択された遺伝資源へのアクセスと、その利用から得られる利益の配分(ABS Access and Benefit-Sharing)に関する議定書。動植物や微生物などの遺伝資源を使って開発された医薬品などの利益を原産国にも公平に配分することを目的としている。COP10においては、この議定書の合意を得るのが最も困難であった。なぜならば議定書の適用範囲(植民地時代に先進国が入手した遺伝資源も対象とすべき[遡及適用]と主張するアフリカ諸国と、先進国を中心とする利用国の対立)や、遺伝資源から生ずる派生物の扱いなどをめぐって意見が対立したからである。採択された議定書では、遺伝資源のアクセスについては各締約国に対して明確化・透明化を義務付け、利益配分については、相互合意に基づき当事者間で決定することなど、生物多様性条約の規定に実効性を持たせるため、締約国が実施すべき具体的措置を決めている。議定書の適用範囲は、遡及適用は認めず、遺伝資源の利用には派生物の利用も含み得ることとなった。また、利益配分のためのグローバルな多国間メカニズムの必要性も検討され、今後各国で国内法や規制の整備が必要となる。遺伝資源へのアクセスと利益配分についてのルールの透明性や明確性が確保されることにより、遺伝資源の提供国・利用国双方にとって望ましい遺伝資源の活用の促進が期待される。