諫早湾干拓事業で閉め切られた潮受け堤防排水門の開門の是非をめぐり、長崎県、佐賀県の漁業者ら(長崎訴訟)、有明海沿岸4県の漁業者ら(佐賀訴訟)が開門を求め、逆に、干拓地の営農者らが開門差し止めを求めて(差し止め訴訟)、訴えた一連の訴訟。佐賀訴訟では2010年、福岡高裁が漁業被害との因果関係を認め、3年以内に5年間開門するよう国に命じた判決が確定した。一方、開門に反対する営農者らが申し立てた仮処分申請では13年、長崎地裁が開門差し止めを命じる仮処分を決定した。長崎訴訟の控訴審では15年、福岡高裁が一審の長崎地裁に続き、開門を認めない判決を下した。干拓事業と漁業被害の因果関係を認めず、漁業者らの控訴を棄却した。漁業者側は上告する方針。相反する司法判断を理由に国が開門を見送るなか、開門差し止め訴訟では16年1月、長崎地裁が営農者側と国、開門を求める漁業者側の3者に和解案を提示した。国が有明海の漁業環境改善に取り組み、漁業者に解決金を支払う代わり、開門調査は実施せず、一連の訴訟を含めた全体的な解決をするよう促した。和解案では、国は漁業者に対し、すでに支払い続けている制裁金に加え、解決金として一定の金銭を支払うのが相当という判断も示した。