20世紀前半、アメリカの大学では人口問題が社会学部で教えられたために、社会学的視点からの人口分析が長足の進歩を遂げた。特に結婚、出生行動、家族計画、若い男女の離家等の現象は、経済学的な要因よりも社会的規範、価値観の変化によって影響されるところが大きいとされ、社会人口学がこれまで先駆的な貢献をした領域であった。出生力決定要因における社会的規範の役割、社会成層化による影響、家族内のジェンダー役割文化の重要性に関する研究は注目される。人口理論のグランド・セオリーとして特筆される人口転換学説(→「第2の人口転換」)は、ノートスタイン(F.W.Notestein)らが提唱したように、少子化の始まりは、伝統的家族が近代的家族に変貌する過程で、家族機能の外部化と子どもの経済価値の喪失によって起きたものと理解している。社会人口学的分析は、しかし死亡、人口移動、高齢化の研究にも及んでおり、例えば産業革命後のヨーロッパで死亡率が低下した時代に、生活水準上昇、栄養改善と並んで地域社会における公衆衛生思想の教育・普及が非常に重要であったこと、また最近、東・南アフリカの深刻なエイズのまん延において、一夫多妻制度や比較的緩い男女の性的ネットワークの存在が有力な条件であるといった研究分析が注目される。