合計特殊出生率の値を、母親の各出生順位の平均出生年齢の変化に応じて調整するもので、出産活動の先送りあるいは前倒しがないときに本来あるべき出生率の水準を意味する。合計特殊出生率は出生力の状況を要約する代表的指標であるが、人口学において昔から指摘されている有名な弱点がある。それは、この指標が、出産行動のタイミングの変化に影響され、女性の一生を通じての出生数は同じでも、年次的に見ると顕著な違いが現れることである。例えば晩婚化が進行する場合に、若い20代の年齢の出生が少なくなる一方、30代で代わりの出生の増加が起きていないと、その年次の出生率は不当に低くなる。出生のタイミングの変化を考慮する場合、年次別の年齢別出生率を再編成してコーホート(cohort 同時出生集団)別の出生率を推定することができる。しかし、コーホート出生率は出生のタイミングの影響を含まないからその点では優れているが、若いコーホートは出生をまだ完結していないので、すでに出生を完結したコーホートの状況しか分からないという欠点がある。そこで、アメリカの人口学者ボンガーツとフィーニーは、一定の仮定を設けることで出生の先送りあるいは前倒しの影響を除去した、仮想的な合計特殊出生率の指標を考案した。これが調整合計特殊出生率である。日本の最近年次の合計特殊出生率(専門的には期間合計特殊出生率という)と、調整合計特殊出生率の状況を示すと次の通り。2005年は期間1.26、調整1.36。06年は期間1.32、調整1.47。07年は期間1.34、調整1.54。08年は期間1.37、調整1.46。09年は期間1.37、調整1.59。日本の場合、両者の違いはヨーロッパ諸国と比べ小さい。