不況が続き、経済成長が難しい現在の日本では、高齢者が持っている財産を、できるだけ早く子や孫に移転させることが経済の活性化につながると考えられている。この考え方を税制を通じて実現しようとするのが、「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」。自民党政権下の2009年に創設された。その概要は、その年1月1日で20歳以上、かつ、所得金額が2000万円以下である子または孫が、両親または祖父母から住宅取得等資金の贈与を受けてマイホーム(新築、中古、増改築、床面積が50平方メートル以上240平方メートル以下などの要件が設けられている)とその敷地を取得(マイホームの取得以マイホーム前の先行取得も可)すること。その住宅取得等資金を取得した日の年の翌年3月15日までに、その取得した住宅取得等資金の全額をマイホームの取得に充てるとともに、同日までにこの特例を受ける特定受贈者の居住の用に供したこと、または同日後、遅滞なくその特定受贈者の居住の用に供することが確実であると見込まれるなどの要件も設けられている。このような要件を満たす場合は、贈与税を課税しないというのがこの特例。この特例を適用して17年に贈与を受けた場合は、(1)省エネルギー性、耐震性を備えた良質な住宅用家屋を取得した場合は1200万円(贈与税の基礎控除110万円を加えると1310万円)、(2)(1)以外の住宅用家屋の場合は700万円(贈与税の基礎控除110万円を加えると810万円)が非課税限度額になる。17年度の税制改正では、例えば適用要件の一つである住宅取得等資金を取得した日の属する年の翌年3月15日後遅滞なく居住の用に供することが確実であると見込まれることにより、この特例の適用を受けた後に、マイホームが災害により滅失や通常の修繕によっては原状回復が困難な損壊があったことにより、居住の用に供することができなくなった場合であったとしても、この特例を適用することにする。(→「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」)。