日本の個人資産の約6割は、60歳以上の世代が所有している。これまでも高齢者が所有している資産の若い世代への移転を税制において推進してきた(→「直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度」)。2013年度の改正では、高齢者の資金を子どもや孫の教育資金に充てる場合には、一定額について贈与税を非課税とする措置を講じた。具体的には、(1)受贈者は30歳未満の子、孫であること、(2)その父母、祖父母などの直系尊属が金銭等を信託銀行、銀行、第一種金融商品取引業を行う金融商品取引業者である金融機関に信託等をすること、(3)資金は13年4月1日から19年12月31日までの間に拠出すること、(4)教育資金は、文部科学大臣が定める学校等に支払われる入学金その他の金銭、学校等以外の者に支払われる金銭のうち一定のものであること、(5)受贈者は、本特例の適用を受けようとする旨等を記載した教育資金非課税申告書を金融機関を経由し、受贈者の納税地の所轄税務署長に提出すること、(6)受贈者は、払い出した金銭を教育資金の支払いに充当したことを証する書類を金融機関に提出すること、などの要件を満たす必要がある。この要件を満たす場合は、信託受益権の価額、または拠出された金銭等の額のうち受贈者1人につき1500万円までの金額について贈与税が非課税になる。15年度の改正で、特例の対象となる教育資金の使途の範囲に、通学定期券代、留学渡航費等を加えることになった。さらに、金融機関への領収書等の提出について、領収書等に記載された支払金額が1万円以下で、かつ、その年中における合計支払金額が24万円に達するまでのものについては、その領収書等に代えて支払先、支払金額等の明細を記載した書類を提出することができることにした。この改正は、16年1月1日以後に提出する書類について適用する。(→「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税制度」)