2012年に発足した安倍内閣は、デフレ脱却や経済の再生を推進してきた。2014年は急激な円安になったが、消費税率を5%から8%へアップしたこともあり、消費は低迷し経済は好転していない。そのため、消費税率の10%への引き上げは17年4月1日まで延期された。15年は引き続き、これまでと同様に経済再生に取り組む。税制の第一の使命は税収を確保することにあるが、経済政策の手段としても用いる。近年の目まぐるしい税制改正は税のゆがみを正すというより、経済を一定の方向に誘導するためのものである。15年度の税制改正のうち、主要なものはこの考え方に基づいている。たとえば、企業収益を拡大させるために法人税を改革する。法人税率を引き下げて税引き後の手取り額を多くし、それを賃金の支払いに回してもらい経済を好循環に導く。法人税率は数年かけて20%台に引き下げることとしており、その減収を補うために課税ベースの拡大を行う。これ以外に経済を活性化するための改正がいくつも用意されている。たとえば、株式の譲渡益などを非課税にするNISAの拡充、ジュニアNISAの創設(→「少額投資非課税制度(NISA)」)、結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置制度の創設、消費税率の10%アップに対応する住宅ローン控除額の拡充などである。また、安倍内閣は地方創生を掲げている。これは、日本の人口の減少と東京圏への一極集中によって地方経済が縮小していることに対応するものである。この点についても税制を一つの手段として用いる。本社を東京圏から地方へ移転した場合の投資減税の創設、ふるさと納税の拡充などの改正を行う。国際的な租税回避がG20やOECDで問題にされている。国境を越えた電子商取引についての消費税の課税制度の創設、外国子会社の益金不算入制度の改正、出国時における譲渡所得課税特例の創設などの改正を行う。