2018年度の税制改正の柱は、大きく四つある。一つめは、引き続きデフレ脱却と経済再生についての取り組み。これまでの所得拡大促進税制を改組して十分な賃上げと国内設備投資を行った企業については、賃上げ金額の一定割合に対しての新たな税額控除制度を設ける。これとは別に、国際競争力を早急に強化すべき事業分野における情報連携投資については、特別償却または税額控除を認める。一方、当期の賃上げが前期の賃上げを下回り、かつ、国内設備投資額が当期の減価償却費の10%以下である大企業に対しては、研究開発税制などの税額控除を適用しないというムチの政策も用意している。
中小企業の廃業が増加していることに対しては、経営者から後継者への中小企業の株式を贈与・相続による取得をしやすくするために、10年間の贈与税、相続税の特例措置を講ずる。
観光立国の実現に向けて、観光促進のための税として国際観光旅客税(出国1回につき1000円)を創設する。地方拠点強化税制も見直す。
2つめの改正の柱は、個人の所得税、住民税の見直し。最近では、一つの企業に所属して給与所得者として働くのではなく、専門分野の能力を生かしてフリーランス(自営業者)として働く人が増えるなど、働き方が多様化している。そこで、給与所得者や公的年金の受取者に認められている給与所得控除や公的年金等控除を引き下げ、所得の内容にかかわらず適用される基礎控除額に10万円を付け替える改正を行う。この場合、高額所得者の基礎控除は、所得が一定額を超えると徐々に減少し、最後はゼロになる仕組みとする。さらに、高額な収入を得ている給与所得者と公的年金の受取者には、10万円を付け替え措置とは別に、高額部分の収入については、給与所得控除と公的年金等控除を認めないこととする。
3つめは、経済活動の国際化への対応。各国の税制の違いの隙間をぬって税逃れが横行している。これに対し、OECD(経済協力開発機構)を中心に対抗策を講じる体制を作っており、日本も国際的な協調体制に参加している。18年度は、法人税の課税に関係する恒久的施設や外国子会社合算税制などの見直しを行う。
4つめは、たばこ税の見直し。増税により喫煙を抑制するという誘導効果はあるが、18年度の改正は、財源不足を補うためと考えられる。ただし、3回に分けて段階的に実施する。