災害が発生したときに、外力が大きすぎて被害を完全にシャットアウトできない場合、ある程度の被害が生じることを許容する対策を指す。1988年に河田惠昭が学術論文で提唱した。阪神・淡路大震災では、1923年の関東大震災以来の防災対策の限界、すなわち異常な外力が働いた場合に、防災施設や構造物によっては被害を発生させないようにすることができないとわかった。そこで、構造物などによって被害抑止するという「防災」と、情報によって被害軽減するという「減災」を組み合わせた減災システムの重要性が明らかとなった。すなわち、災害の予防を目的とする「防災」と、起きてしまった災害の被害を最小限に食い止め、いかに速やかに復旧できるかに重点を置いた「減災」をバランスよく組み合わせることが重要である。そのためには、事前に被害想定を実施し、関係機関間や住民が情報共有していることが必須となる。そして、災害発生前にすでに災害発生からの災害過程がシミュレートできるまでに到達しておく必要がある。なお、減災の考え方は、東日本大震災からの復興事業で採用され、被災地では、津波減災対策として多重防御が採択され、これに基づく「津波防災地域づくりに関する法律」が施行され、まちづくり計画が進行している。なお、13年6月に災害対策基本法が改正され、基本理念としての減災の考え方が正式に導入された。