地球温暖化の影響によって集中豪雨が激増し、外水・内水はん濫を経て、浸水・水没被害が発生しやすくなっている。都市で発生する水害では、河川や下水道から溢れた流水が都市の低地部に集まり、地下街や地下鉄、地下室が浸水あるいは水没するという重大な災害が発生している(→「都市型水害」)。1999年と2003年にはJR博多駅前の地下街とその周辺のビルの地下室が、2000年の東海豪雨災害では名古屋市営地下鉄への浸水で交通がまひした。集中豪雨の浸水が原因で地下鉄が止まる事例は東京を始め、福岡でも発生している。これに対しては、13年の改正水防法においても、浸水想定区域内の地下街、高齢者等利用施設、大規模工場等における自主的な避難確保・浸水防止の取り組みの促進、地下空間における浸水対策に関する事項が記入されている。問題は、集中豪雨や高潮による市街地はん濫では、浸水を防ぐ時間的余裕がある一方、地震による津波の場合、時間的な切迫性があるということである。南海地震の場合、発生後約2時間で津波の第一波が大阪に来襲することがわかっている。市内に約400基存在する水門・鉄扉・陸閘のすべてを閉めることは不可能であり、市街地はん濫から地下空間への浸水は避けられないと考えられている。しかも、地下空間浸水は、地下鉄の出入り口だけではなく、地下通路に地下階が接続しているビル群の地上浸水からも発生することであり、このため、わが国では、事実上、地下空間浸水対策は不十分になっている。