近年の風水害に際し、自宅などから自力で避難できない要配慮者の溺死が顕著なことから、人的被害軽減を目指した対策の基本となる対象者の名簿である。市区町村では、一般的に、次の(1)~(3)に該当する人を対象としている。(1)一人暮らしの高齢者あるいは高齢者だけの世帯、(2)介護保険の要介護3以上の認定を受けている人、(3)知的・身体障害者、難病の患者など。この取り組みは、自助と共助の組み合わせを基本としており、災害時要配慮者の発見とネットワーク作りのため、自ら希望して登録する方式で名簿を作成している。名簿の登録情報の取りまとめや民生・児童委員への提供は福祉関係部局で行い、自主防災組織などへの提供は防災担当部局が行うなど、福祉と防災の連携を企図しながら取り組みを進めることが重要である。実際には、避難勧告発令時にすでに市街地氾濫(はんらん)が始まっている場合も少なくなく、しかも地域に災害時要配慮者が複数存在する場合には、一人ひとりの災害時要配慮者の避難を順番ではなく同時に進める必要がある。したがって、避難支援に動員できる人数に限界がある場合には、事前の避難訓練が必須となっている。13年6月の災害対策基本法の改正では、市区町村はこの名簿を作成することが義務付けられた。