胸腺は縦隔と呼ばれる部位、具体的には胸骨の裏側に存在する臓器である。幼少時には免疫にかかわる重要な働きをもつが、年齢とともに退化する。胸腺腫は、その退化した胸腺に発生する、比較的まれな疾患である。重症筋無力症に代表される、自己免疫疾患という免疫機能異常を引き起こすことがある。ゆっくりと増殖し、転移なども起こりにくく、症状も出にくいが、進行すると周囲の心臓、肺、大血管などに直接波及し、胸痛、せき、痰、呼吸困難、上半身や頸部の浮腫などが見られるようになる。胸腔内に播種するような、悪性度の高いものもある。腫瘍が胸腺の被膜を覆っているか、破っているかで進行度が違ってくる。基本的には手術で切除することが第一選択であるが、切除不能の場合には、放射線治療、化学療法、ホルモン療法を行う。