涙は上眼瞼(じょうがんけん)の外側部に位置する涙腺(るいせん)から分泌される液で、角膜の乾燥を防ぎ、眼の表面の光学的な性質を良好に保つ働きをしている。眼の表面を覆う涙液は3層からなり、表面の脂質層は眼瞼のマイボーム腺から分泌された脂質を含んで涙液の蒸発を防ぎ、中間の涙液層は涙腺からの分泌液で、深部の粘液層は結膜の杯(さかずき)細胞からのムチンを含んでいる。涙腺からの分泌には3種類がある。基礎涙分泌は普段から分泌される涙液で、1日あたり2~3 ミリリットル分泌され、リゾチームや免疫グロブリンなど抗菌作用をもつ物質を含んでいる。反射性涙分泌は、角膜や結膜への刺激があった時に反射的に分泌される涙液で、交感神経によるものである。精神性涙分泌は感情が高ぶった時に分泌される涙液で、副交感神経によるものである。基礎涙分泌が不足するとドライアイ(角膜乾燥症)を起こし、眼の違和感や結膜炎などを誘発して視力が障害されることもある。過剰に分泌された涙液は、内眼角(ないがんかく 目頭)に位置する涙点から鼻涙管を通して鼻腔に流れ込む。