国際移植学会が2008年5月に採択した、渡航移植を制限しよう、という宣言のこと。正式には、臓器移植と移植ツーリズムに関するイスタンブール宣言という。本宣言は、国際的に移植用のための臓器不足が指摘されて、そのために各国が自国民の移植を優先しようとする傾向を受け、各国に臓器不足への対応策を求めたものである。また、この宣言を受けて、世界保健機関(WHO)が渡航移植を国際的に禁止する決議を行うのではないか、との憶測が喧伝され、日本での臓器移植法の改正が促されたともされる。WHOの決議は、09年に起こった新型インフルエンザA-H1N1の流行で、先延ばしされたとの見方がある。イスタンブール宣言を注意して見ると、そこには、海外で臓器移植医療を受けようとすることについて、条件を付けて制限しようとしている。それは、各国が自国民の移植に関して、移植用の臓器を確保する努力と、移植に至るような疾病の予防プログラムの推進を強調しており、各国で自国民の移植のみを行う、いわば、臓器移植の「一国自給自足主義」のようなものを強調しているのではなく、各国にその周辺国との協力も求めているのである。