特定の組織や器官の細胞に分化する元の細胞(幹細胞)を培養し、筋肉や神経を再生する治療法。2011年1月、日本再生医療学会は、国が示した「ヒト幹細胞を用いる臨床研究に関する指針」に沿わない不適切な幹細胞治療は行わないように、と求める声明文を学会員に向け発表した。現在、幹細胞治療は国の研究費などで臨床研究が行われており、その実施機関は倫理委員会によって審査され、実施内容も厚生労働省の審査を必ず受けることになっている。しかし近年、民間の医療機関では、適切な手続きを経ず、治療効果も不明な幹細胞治療が行われている。たとえば脂肪細胞から取り出した幹細胞を使用して、糖尿病や脊髄損傷を治療する、とうたっているクリニックなどもあるが、そのような治療は動物実験でも効果や安全性が証明されていないとされる。そうした状況の中で、種々の医療事故などが起きている。ES細胞やiPS細胞による再生医療への期待が話題となる一方、それを悪用して、高額な治療費を要求するような事件も問題化している。