逆転写酵素をもったがんウイルス、という言葉を短縮してつけられた一群のウイルス。20世紀の初め、鳥やマウスなどの白血病や肉腫の原因として発見されたが、約半世紀を経て、これらが共通してその当時発見された逆転写酵素をもつことがわかり、レトロウイルスという名が与えられた。多くの動物で見つかっていたが、ヒトでは、1980年代に入って初めて成人T細胞白血病の原因としてHTLV-1が、エイズの原因としてHIV-1、HIV-2が発見された(→「腫瘍ウイルス」、「HIV」)。エイズの例が示すように、レトロウイルスは必ずしもがんを起こすとは限らない。また、HTLV-1は成人T細胞白血病のほか、痙性脊髄まひHAM/TSPやぶどう膜炎、リウマチ様関節炎と深く関係している。