エンベロープ(たんぱく質の皮膜)を持つRNAウイルス(ribonucleic acid virus)で、パラミクソウイルス科の麻疹ウイルスにより発症する感染症。日本では毎年5万~10万人の患者が発生する。麻疹は気道から感染し、2~4日間続く鼻かぜに似た症状から始まる。この時期には、コプリック斑と呼ばれる白色斑が、口腔粘膜の第1小臼歯近くに現れる。発疹は耳の後ろに最初に現れ、そこから周囲に広がっていく。患者1000人に1人の割合で急性の脳炎が起こり、この場合は高い死亡率がある。亜急性硬化性全脳炎は、まれに見られる進行性かつ致命的な脳炎である。診断は臨床的に行い、急性期および回復期の血清(ペア血清という)を用いた赤血球凝集阻止試験か、IgM(免疫グロブリンM)と呼ばれる抗体を検出するELISA法(酵素免疫測定法)という抗体検査が有用である。有効な抗麻疹ウイルス薬はない。ワクチンに関しては、有効なワクチンが存在する。最近では、ワクチン接種を受ける人の割合が減ってきたため、アメリカなどの渡航先で感染源になる日本人もいる。