日本脳炎は急激な発熱、髄膜刺激症状、意識障害などの脳炎症状を主な徴候とする急性脳炎である。多くは不顕性感染であるが、いったん発症すれば3人に1人が死亡し、3人に1人に後遺症が残るという恐ろしい感染症である。アジアでは、ウイルス脳炎のうち日本脳炎は、最も重要なものとなっている。毎年3万~5万件の症例と、約1万件の死亡が報告されているが、報告されないものがさらに多数に上ると考えられる。この原因は、フラビウイルスに属する日本脳炎ウイルスであり、蚊によって媒介されるが、今のところ効果的な抗ウイルス薬はない。ワクチンについては、JE-VAX という、国際的に認められたものがあったが、2005年に製造中止となった。したがってワクチン不足が予想され、培養細胞を用いた次世代のワクチンが、早期に利用できるようになることが期待されている。