B型肝炎ウイルス(HBV ; hepatitis B virus)という、DNA(deoxyribonucleic acid)ウイルスの感染が原因の肝臓炎症性疾患。臨床的には、感染後数カ月で症状が出る急性肝炎と、症状が6カ月以上持続する慢性肝炎に分類される。急性肝炎を発症した場合、まれに肝臓のほとんどが破壊され、死に至る恐れがある劇症肝炎に進行することがある。B型肝炎ウイルスの感染は、すべて血液を介するものであり、輸血(日本では検査により、すべて排除されている)、感染者との性交渉、感染血に汚染された注射針や入れ墨針の使用、感染妊婦からの子どもへの感染、医療行為中の針刺し事故などがある。成人に感染すると、HBVのある特定遺伝子型(ジェノタイプA)は、10%前後の頻度でHBVキャリア(感染ウイルスを保有する未発症者)となることがわかってきたが、多くは不顕性感染として自覚症状がないまま治癒し、一部の人が顕性感染として急性肝炎を発症する。ところが、新生児あるいは乳幼児期に、このウイルスが感染した場合にはキャリア化することが多い。HBVキャリアのうち、10~15%がその後に慢性肝炎を発症する。さらに、その慢性B型肝炎患者から、肝硬変や肝臓がんへ進行することがあるので、注意が必要である。治療は、急性肝炎と慢性肝炎とで異なり、有効な抗ウイルス剤がある。予防に有効なワクチンがすでに開発されている。