胎児や免疫不全患者に、疾患をもたらすウイルス。このウイルスは多くの成人に感染が見られ、唾液や尿から検出されるが、一般的にはヒトに影響を及ぼさないと考えられていた。しかし妊娠中の女性が初めて感染し、胎児に伝染すると、死産や発育不全、難聴、脳障害を招く。出産後も、新生児の難聴や知能障害のような形で発見されることがある。先天性難聴の2割が、このウイルスの感染によるものといわれる。かつては妊婦の90%以上が抗体陽性(すでにウイルスに感染して免疫を持っている)だったが、近年は70%に低下しており、胎児への感染の危険性が増大している。妊婦や新生児に感染した場合、早期発見が重要である。また、免疫力が低下した成人では、肺炎、角膜炎などを起こすことがある。それまで潜伏していたウイルスが、再活性するからである。すなわち、免疫抑制剤を服用する臓器移植患者などは、注意が必要である。治療法として抗ウイルス剤、妊婦には抗ガンマグロブリン療法があり、専門医の受診が必要である。ワクチンはない。