精神的および肉体的にかかる大きなストレスが誘因となり、心臓の筋肉の収縮が突然、一過性に悪化する病気。閉経後の女性に多いのが特徴で、収縮力の悪化した心臓の形態が、タコを捕獲する漁具に似ていることから、この病名がつけられた。胸痛、息切れ、動悸(どうき)を突然訴えて発症し、急性心筋梗塞の症状に似る。心筋梗塞との大きな違いは、心臓に栄養を供給する冠状動脈に狭さくがないこと、数週~1カ月間で心臓の収縮異常が自然に改善していくことである。したがって、治療は安静とストレス要因の除去、また、一時的に起こる心不全への対処と、血栓形成の予防が中心となる。本症の原因は、はっきりしていないものの、くも膜下出血や手術などの肉体的ストレスのほか、災害時の激しい精神的ショックなどによっても誘発されることが知られており、2004年の新潟県中越地震の際にとくに注目された。11年3月に起きた東日本大震災においても発症が懸念されている。