2010年9月、日本脂質栄養学会のコレステロールガイドライン策定委員会が、医療従事者に向けて発表した指針。(1)コレステロール摂取量を増やしても、血清コレステロール値は上がらない、(2)高リノール酸植物油の摂取を増やし、動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らす従来の栄養指導は、むしろ心疾患やがんなどを増やす危険性がきわめて高い、(3)40歳以上の一般集団では、総コレステロール値の高い群で、がん死亡率や総死亡率が低い、(4)特別なケースを除き、動脈硬化性疾患予防にスタチン類は不適切でありすすめられない、(5)善玉HDL・悪玉LDL説はその根拠が崩れた、など。従来から医学界で採用されている日本動脈硬化学会を中心としたコレステロールに関する考え方と、かなりの部分で対立する内容となっている。そのため、日本医学会や日本動脈硬化学会から反論声明が出されている。興味を引くのは、この策定委員会は「コレステロール降下剤の製薬会社などからはほとんど研究費をもらっていないから、このようなガイドラインを作成できた」と主張している点である。また、基本的考えは「総死亡率が最も重要なエンドポイント」という点であり、従来のように「脳卒中発症との関連」「心筋梗塞発症との関連」をエンドポイントとしていない。この部分の考え方の違いが、争論の一つでもある。いずれにせよ、混乱を避けるためにも専門家同士が討論し、わかりやすい指針を出すことが急務といえる。