脳血流の遮断により酸素やブドウ糖が供給されなくなる結果、そこから先の脳組織が死滅する病気。脳梗塞は、大きく以下の3病型に分類される。(1)アテローム血栓性脳梗塞は、頸動脈や主要脳動脈の動脈硬化巣に生じた血液のかたまり(血栓)が血管内腔を閉塞することで発症する。(2)心原性脳塞栓症は、心臓内にできた血栓が何らかの原因ではがれて脳の動脈に詰まって発症する。(3)ラクナ梗塞は、脳内の比較的細い血管が閉塞したり壊死に陥ることで発症する。これらの脳梗塞に加え、脳出血とクモ膜下出血を併せて脳卒中という。脳卒中による死亡率は2006年時点で、悪性腫瘍、虚血性心疾患(→「狭心症」)に次いで3位である。脳梗塞による代表的な症状としては運動麻痺、感覚障害、ろれつが回らない、言葉が出ない、めまい、ふらつき、意識障害などがある。発症から治療開始に至る時間が予後を左右するため、迅速な診断と治療が望まれる。現在では、CTやMRIといった画像診断による早期診断が可能で、一部の施設では血栓溶解療法を含む超急性期治療が実施されている。一度発作が起きた人の5~7%が1年以内に再発する。脳梗塞の主な危険因子として高血圧症、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、喫煙、不整脈などがあげられる。予防には普段の生活でこれらの危険因子をいかに減らせるかがポイントである。医師や患者らで作る「日本脳卒中協会」(事務局・大阪市)では、一般市民向けに脳卒中の予防や知識の普及活動を行っている。