持続的に動脈血圧が高い状態。血圧値は測定時の状況により変動しやすいため、高血圧症の診断に際しては複数回の血圧測定を行い、さらに家庭血圧測定値を参考にする。現在最もよく用いられている世界保健機関(WHO)と国際高血圧学会の基準では、最高血圧(収縮期血圧)が14ミリ水銀以上、または最低血圧(拡張期血圧)が90ミリ水銀以上の状態を高血圧症としている。高血圧症に特有の自覚症状はないが、年余の経過の後、脳卒中、心疾患、腎疾患等の重篤な疾病の原因となりうる。特に日本では、脳卒中(→「脳梗塞」)と虚血性心疾患(→「狭心症」)を合わせた死亡率は、がんによるそれと肩を並べる。また、死亡をまぬがれても永続的な後遺症に悩まされることも多く、患者本人のみならず家族にかかる負担も大きなものとなるので、高血圧の治療は重要である。高血圧例の大部分は、原因となる疾患が認められない本態性高血圧であり、遺伝的、体質的要因に環境的要因が加わって発症するので生活習慣病ともいわれている。発症の誘引となりうる肥満、塩分過剰摂取、運動不足、過度の飲酒、喫煙、ストレス等の生活習慣を改善することは、高血圧を予防する上で一定の効果が期待される。特に高血圧症の家族歴がある場合は積極的に自分の生活習慣を見直し、改善するよう努めたほうがよい。すでに高血圧症を発症している人は、早期に専門医を受診し、他疾患が原因となって血圧が上昇している二次性高血圧との鑑別を受け、高血圧症に対する治療を受ける必要がある。