「アルコール性」とは、長期間にわたる過剰の飲酒が肝疾患の主な原因と考えられる病態で、禁酒により種々の臨床症状や検査成績の改善が認められるものである。アルコール性肝障害の発生は1日当たりのアルコール摂取量に依存しており、日本酒に換算して1日に3合以上が危険域、5合以上が高度危険域とされている。しかし、肝障害の発生には、栄養、遺伝素因、性差などの修飾因子も関係しており、女性は男性より少量のアルコールでも肝障害が進展しやすい、などが知られている。アルコール性肝障害は、初期病変である脂肪肝からアルコール性肝炎、肝線維症、終末像といえる肝硬変まで様々な病型を呈する。初期には肝細胞に脂肪の蓄積が認められ、病変の進展とともに肝細胞壊死、線維化が進行し、肝硬変に至る。脂肪肝および肝線維症の一部は、可逆性病変であるが、進行した肝線維症や肝硬変では、不可逆性病変となり、肝機能の低下による手掌紅斑、胸腹水、食道静脈瘤、黄疸、肝性昏睡などが出現する。アルコールによる肝障害のある患者では、断酒が最も大切であり、その他はあくまで補助的な治療と考える。アルコール性脂肪肝や軽度の肝炎、肝線維症、肝硬変の代償期ではビタミン剤、肝庇護剤などの投与を行い、非代償期ではウイルス性肝硬変非代償期に準じ、食事療法、食道静脈瘤の処置を行う。アルコール性肝硬変の予後調査では禁酒による5年生存率の明らかな改善が認められている。アルコール依存が強い場合には、断酒会への積極的な参加など、社会的な援助が必要となってくる。