養生とは漢方医学の考えに基づく摂生療法のこと。漢方では薬や鍼灸(しんきゅう)による臨床治療だけでなく、生命観、自然観、疾病観など、医学の背後にある哲学も重視される。とくに養生は古人の知恵の蓄積で、現在にも応用できるものが多い。江戸時代の儒学者、貝原益軒(かいばらえきけん)が記した『養生訓』では、養生の基本は生命活動を営むエネルギー「気」の管理であり、日常生活では食事、睡眠、運動、感情による「気」のコントロールがとくに重要とされている。たとえば、食事と睡眠で「気」が補われる。補った「気」を全身にめぐらせるには、運動が大切である。感情のコントロールは、「気」の働きを整える。病気の治療にあたっても、養生は基本である。中国の後漢に書かれた医学書には、胃腸の弱い人のかぜの引き始めには桂枝湯(けいしとう)を用いるが、服用後に少量の粥(かゆ)をとらせ、体を温めて少し汗をかかせるように、との指示がある。生ものや冷たいもの、辛いもの、酒、肉などを控える、とも記されている。薬の特徴だけではなく、食事や生活方法などの指示も含めたものが治療であり、薬の効果を最大限に発揮させるためにも養生が重要になる。