睡眠中に無意識に尿を漏らしてしまう夜尿症は、漢方医学では、胃腸が弱くて下痢や腹痛をよく起こしたり、疲れやすく、かぜを引きやすい子ども(虚弱児)にみられやすいと考える。生命活動を営むエネルギーである気(き)には、親から受け継いだ先天の気、胃腸によって日々作られる後天の気があるが、夜尿症の虚弱児は、この両方が少ない状態であることが多い。そのため、胃腸の働きをよくして後天の気を補う小建中湯(しょうけんちゅうとう)や、黄耆建中湯(おうぎけんちゅうとう)などが頻用される。下痢や頻尿をともなうようなら、人参湯(にんじんとう)なども用いられる。先天の気を補うには、六味丸(ろくみがん)などを使用する。一方、元気があって、尿意をもよおしても目が覚めないような子どもには、葛根湯(かっこんとう)などが処方される。そのほか、ストレスが原因で夜尿症が起こる場合もあり、その際は、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)や桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)なども考慮される。