漢方医学的には、加齢とともに体内のエネルギーである気(き)や血(けつ)が減ってくると、寝るためのエネルギーも不足してくるので、睡眠にかかわる不調が増えてくると考える。疲れすぎて眠れないときは、気、血を補う帰脾湯(きひとう)、加味帰脾湯(かみきひとう)、酸棗仁湯(さんそうにんとう)などが用いられる。また、頭がさえている感じがして寝つきが悪い場合は、自律神経のバランスが崩れている可能性が高い。日中の活動神経である交感神経から、リラックス神経である副交感神経にうまくスイッチできていない状態である。まずはパソコン作業や、刺激的なテレビ画面などは控え、室内の照明を落として静かな音楽をかけるなど、副交感神経が働くように、ゆったりとした気分で過ごせるように環境を整えることが大切である。さらに、日中の生活についても気を使いすぎない程度に体を動かし、夜の休息とのメリハリをつけるようにすることが重要である。そのうえで、自律神経の働きを整える効果のある抑肝散(よくかんさん)、抑肝散加陳皮半夏(よくかんさんかちんぴはんげ)などの漢方薬を用いると効果が現れやすい。ストレスによって、不眠のほかに抑うつ気分もともなう場合は、柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)などが用いられる。