女性の更年期は、月経が停止する(閉経)前後の約10年間を示し、通常45~55歳ぐらいにあたる。女性ホルモンのエストロゲン(estrogen)が減少することで、太りやすい、冷えやのぼせ(ホットフラッシュ)、動悸、めまい、不眠、いらいらなどの症状が出現し、これらの症状が生活に支障がでるような状態を更年期障害という。症状は多彩で、かつ程度にも個人差がある。そのため女性ホルモンの減少だけではなく、子どもの受験、親の介護、仕事のストレスといった、社会環境的要因の関与も大きいと考えられる。更年期障害についても漢方薬が使用される。ホットフラッシュがひどい場合は、血(けつ)のめぐりをよくする桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、熱を冷ます黄連解毒湯(おうれんげどくとう)などが選択される。便秘がある人には桃核承気湯(とうかくじょうきとう)なども使用される。頭痛やめまいがひどい場合は、水(すい)のめぐりをよくする当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)なども候補になる。いらいらがひどい場合や、抑うつ傾向では、生命活動を営むエネルギーである気(き)がうまくめぐっていないことが原因であるため、加味逍遙散(かみしょうようさん)、抑肝散(よくかんさん)、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)、帰脾湯(きひとう)などで気のめぐりをよくする。