月経前症候群(PMS)は、月経前3~10日の黄体期の間に続く精神的・身体的症状で、月経発来とともに減退、消失するものと定義され、多彩な症状が見られる。病因として中枢でのセロトニン代謝系の異常、卵巣ホルモンの不均衡、脳内物質の分泌異常など、多くの仮説が提案されているが明確ではない。肩こり、腹痛、ニキビ、胸の張りなどを訴える場合は、気血水(きけつすい)のうち、血(けつ ; 血液)のめぐりが悪いお血(おけつ)にともなう症状と考え、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)などを用いる。皮膚の乾燥、口乾などもある場合は、血が少ない血虚(けっきょ)の状態と考え、温経湯(うんけいとう)などを処方する。月経前にとくに疲れやすくなり、眠気も強く、横になりたいなどを訴えるときは、気(き ; 生命活動を営むエネルギー)が少ない気虚(ききょ)の状態と考え、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)などが候補となる。月経前にイライラして怒りっぽくなったり、逆にうつうつして涙もろく、やる気がなくなったりする場合は、気が滞っている気うつの状態と捉え、加味逍遙散(かみしょうようさん)や半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)などを使用する。さらに、浮腫、頭重感、めまいなどが見られる場合は、水(すい ; 血液以外のリンパ、汗などの体液)の働きが悪い水毒(すいどく)にともなう症状と考え、五苓散(ごれいさん)や当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)などが頻用される。