収縮期血圧が100ミリ水銀(血圧の単位)以下で、めまい、立ちくらみ、だるさ、疲れやすさ、食欲不振、頭痛・頭重感などの症状をともなう場合に、低血圧症と定義される。貧血、低栄養、心臓や内分泌疾患などの明らかな異常がある場合は、その治療が優先される。しかし、明らかな原因がないことも多く、その場合は漢方薬によって自覚症状の改善を試みる治療がなされる。めまい、立ちくらみ、頭痛・頭重感をともない、胃腸の働きが低下している場合には、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)が頻用される。疲労感が強い時には、朝鮮人参(ちょうせんにんじん)や黄耆(おうぎ)など、元気をつける効果がある生薬を含む、補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などが用いられる。生活指導では十分な睡眠、バランスのよい食事、定期的な運動など、規則的な生活を基本として、急な起立や長時間の立ち仕事などを避けることなどをアドバイスする。