動悸とは、心臓の拍動が自覚される状態のことで、「ドキドキする」などと表現される。脈が乱れている場合と、そうでない場合があるため、心電図で確認する必要がある。甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、低血糖、貧血、発熱、脱水などの全身性疾患でも起こることがあり、その場合は原因疾患の治療が必要となる。漢方医学では、五臓のうち心臓や循環器系と関連が深い「心」の働きが悪くなると、動悸を感じると考える。この場合は、炙甘草湯(しゃかんぞうとう)、帰脾湯(きひとう)など、心を補う処方を行う。また、精神を安定させる竜骨(りゅうこつ)や牡蛎(ぼれい)を含む、桂枝加竜骨牡蛎湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)なども有効である。自律神経の乱れで動悸を自覚しやすい場合は、体力がある人は柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)、比較的体力がなく、冷え症の人は柴胡桂枝乾姜湯(さいこけいしかんきょうとう)などを用いる。更年期症状に由来する動悸には、山梔子(さんしし)を含む加味逍遙散(かみしょうようさん)、不安感に伴う動悸には、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)なども用いられる。