乾燥肌は外気が乾燥する冬に多いが、不規則な生活やエアコンの普及などにより、一年中見られるようになった。皮膚に痒みを生じる原因にもなるので、要注意である。漢方医学では、生命活動のエネルギーである気(き)(→「気血水」)、血液を意味する血(けつ)、リンパ液や汗などの体液をいう水(すい)のバランスを取ることが、重要と考えられている。特に、血の働きは大切であり、血行が悪くなったお血(おけつ)の状態では、鮫肌のように皮膚がゴワゴワしてくる。血行が悪い状態が続くと、次第に皮膚に「血」が届かない状態、すなわち血虚(けっきょ)になり、皮膚の乾燥が顕著となる。水のめぐりが悪い水毒(すいどく)、水滞(すいたい)も、乾燥肌を招きやすい。血液やリンパ液などを、体の隅々までめぐらせるには気が必要である。日々の「気」は胃腸で作られるので、胃腸が悪いと血、水の働きも悪くなり、乾燥肌を助長する。治療では、血虚やお血を改善させる当帰(とうき)、川キュウ(せんきゅう)、肌を潤す効果のある地黄(じおう)などを含む四物湯(しもつとう)を含む処方が頻用される。例えば、乾燥が著しい場合は、四物湯にコラーゲンの阿膠(あきょう)も入ったキュウ帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)、血虚だけでなく気虚も見られる場合は、四物湯に朝鮮人参や黄耆(おうぎ)などを追加した十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)などが使用される。