当帰(とうき)、川キュウ(せんきゅう)、芍薬(しゃくやく)、地黄(じおう)の生薬で構成され、漢方医学での血(けつ)が足りない状態、すなわち血虚(けっきょ)に用いる基本処方である。血虚では、皮膚や粘膜の乾燥、貧血、貧血様症状、倦怠感(けんたいかん)、冷えなどが見られる。当帰と川キュウは、体を温めて血の働きを高める生薬である。芍薬は鎮痛効果、地黄は滋潤作用がある。このため、月経不順、月経痛、過多月経、産前産後の体調不良、更年期障害など婦人科系疾患に幅広く用いられる。血行改善作用があるため、シミ、凍瘡(しもやけ)、指掌角化症などにも応用される。単独で使う場合もあるが、四物湯を基本とする処方を用いることも多い。倦怠感もある時に使われる十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)、痔出血で使われるキュウ帰膠艾湯(きゅうききょうがいとう)、乾燥してかゆみを伴う慢性湿疹に使われる当帰飲子(とうきいんし)などは、四物湯を含む代表的な処方である。地黄には、胃もたれなどの胃腸障害の副作用があるので、胃腸が弱い人には慎重に投与する必要がある。