浮腫(むくみ)は、心臓、腎臓、肝臓などの内臓疾患や末期がんに見られ、原因疾患の診断と治療が優先される。原因がはっきりしない慢性の浮腫や、二日酔いの浮腫には、漢方が奏効することがある。漢方医学的には、リンパ液や汗などの体液をいう水(すい)(→「気血水」)のめぐりが悪い状態と考える。五臓のうち脾(胃腸)が吸収した水を全身に運搬し、腎が余分な水分を排せつさせる。そのため脾や腎の働きが弱くなると、浮腫が起こりやすくなる。胃腸の働きを高める茯苓(ぶくりょう)、朮(じゅつ)、水分代謝をよくする沢瀉(たくしゃ)、猪苓(ちょれい)などを含む五苓散(ごれいさん)が頻用される。五苓散には体の水分調節の作用があるため、浮腫だけでなく、下痢による脱水にも使用できる。二日酔いによる頭痛、雨や低気圧下での頭痛、めまいなどは水のめぐりが悪い時の症状で、浮腫に伴うことがあるので要注意である。腎の働きは加齢や過労によって低下し、尿の出が悪くなって、むくみやすくなる。この場合は、腎の働きを補う地黄(じおう)を含む、六味丸(ろくみがん)や八味地黄丸(はちみじおうがん)などを使用する。