香附子(こうぶし)、陳皮(ちんぴ)、紫蘇葉(そよう)、生姜(しょうきょう)、甘草(かんぞう)を配合生薬とした処方である。元来は、体力が低下した人の風邪の初期に用いられた。香附子、陳皮、および紫蘇葉には、生命活動を営むエネルギーである気(き)のめぐりをよくする作用があるため、風邪だけでなく、ストレスなど精神的な要因で気のめぐりが悪くなって生じる頭痛、耳鳴り、めまい、不眠、腹痛などの症状にも有効である。マウスを用いた動物実験では、うつ病モデルおよび不安・強迫性障害モデルにおいて、抗うつ、抗不安効果の報告がされている。香附子は気だけでなく、血液循環を意味するところの血(けつ)のめぐりもよくするため、体力が低下した人で、抑うつ状態や不安感を伴う月経困難症、更年期障害などの婦人科関連疾患にも応用される。さらに、シソ科の紫蘇葉には、魚による中毒を予防する効果があるため、香蘇散は食事によるじんましんにも使用される。