軽水炉は330℃程度の熱水を発生させるに過ぎないが、製鉄や水素製造産業では1000℃を超える高温が必要な場合が多い。そこで、冷却材にヘリウム、燃料被覆材にセラミックなど耐高温材料を用いる高温ガス炉の開発が目指されてきた。主にドイツやアメリカで研究されてきたが、経済性の見通しが立たず、1990年までにすべて閉鎖。日本では原子力研究所で高温工学試験研究炉(HTTR ; high temperature engineering test reactor 熱出力30MW)が98年11月に臨界に達し、運転中。2007年には、臨界後初めて30日間の定格出力運転(原子炉出口冷却材温度は約850℃)、10年3月には高温連続運転(原子炉出口冷却材温度は約950℃)を行った。IS法(ヨウ素:Iと硫黄:Sを化学反応の媒体とし、水を水素と酸素に熱分解する)による水素製造が可能といわれるが、連続運転はようやく50日できたに過ぎない。15年以降に、IS法による水素製造の実証実験に入る計画となっていたが、福島第一原子力発電所事故の後、研究は一向に進まない状態となった。一方、南アフリカで、ドイツが開発したペブルベッドモジュール型炉(PBMR ; pebble bed modular reactor)の建設計画があったが、開発途上の原子炉の導入は難しいとの理由で、放棄された。中国、アメリカ、韓国などで高温ガス炉の計画があるものの、実現の可能性は低い。