地殻中に存在するウランの確認埋蔵量は約590万tで、ウラン全体のわずか0.7%を占めるウラン-235だけが核分裂性である。そのため、ウラン-235しか利用できないとすれば、エネルギー資源としてのウランは貧弱なものである。そこで、ウランの99.3%を占める非核分裂性のウラン-238をプルトニウム-239に変換して利用しようとする試みが核燃料サイクルである。もし、核燃料サイクルが理想的に実現すれば、原子力の資源は60倍に増加するといわれているが、そうなったとしても、なお原子力は石炭に匹敵する程度のエネルギー源にしかならない。一方、海水中には、ウランが3.3PPB(parts per billion 10億分の1の意味)溶解している。それが利用できれば、総量で45億tになり、地殻中のウラン-235だけを利用する場合に比べれば、資源量が800倍に膨れ上がる。海水中ウランを効率よく回収する技術の開発も古くから取り組まれてきているが、作業に膨大なエネルギーが必要であるうえ、環境に与える影響にも未知の点が多く、エネルギー源になる可能性は高くない。