ウランを用いた原子炉を運転すると、放射化生成物としてプルトニウム-239ができる。これは核分裂性で、原理的には原子炉の燃料にも使用でき、それを実現するための工程を核燃料サイクルと呼ぶ。もともとウラン資源は貧弱で、核燃料サイクルが実現できなければ、原子力は意味のあるエネルギー資源にならない。現状では、比較的容易なはずの軽水炉の再処理すら困難を極めているうえ、高速増殖炉は世界中で頓挫してしまっていて、核燃料サイクルはまったく実現していない。2003年1月にアメリカが「先進核燃料サイクル構想(Advanced Nuclear Fuel Cycle Concept)」を発表したが、核燃料のリサイクルよりはむしろ超ウラン元素(原子番号92のウランよりも大きい原子番号をもつ、人工的につくられた放射性元素)の核変換処理を含めた放射性廃棄物の低減を目指したもの。日本でも福島第一原子力発電所事故の後、原子力発電から脱却する道が探り始められ、そうなれば、核燃料サイクルを実現させることも無意味になる。
原子力委員会が12年6月に示した核燃料サイクルの選択肢では、30年時点の原発比率0%、15%、20~25%を想定し、核燃料サイクル存廃の「四つの選択肢」を示した。そのうち、30年に原発(発電)比率0%の場合には、再処理工場は廃止、高速増殖炉「もんじゅ」の運転再開は断念、使用済み燃料は全量直接処分とされた。しかし、これまで核燃料サイクル施設を受け入れてきた青森県などから、施設を廃止されると地方財政が破たんするとの反発が出て、かつての民主党政権下の政府のエネルギー戦略では、核燃料サイクル施設を継続するとの政治判断がなされた。さらに、12年12月の総選挙を経て再び自民党政権に代わると、再度核燃料サイクルを積極的に進める方針となった。ところが、六ヶ所再処理工場は一向に完成できる見通しがなく、これまでそれを引き受けてきた日本原燃株式会社が立ち行かなくなる可能性が高くなり、政府は日本原燃を株式会社から認可法人に変え、再処理からの撤退を防ぐことにした。しかし、会社の形態を変えたところで、技術的な困難が消えるわけではない。そのうえ、「もんじゅ」は、原子力規制委員会が従来の日本原子力研究開発機構以外の受け皿を探すように勧告したが、それ以外に受け皿などあるはずもなく、こちらもまた破たんの可能性が高い。