ガラスは固いが、常温では衝撃を受けると割れる。それを脆性(brittleness)と呼ぶ。一方、金属は常温では、力を加えても割れず、変形する。それを延性(ductility)と呼ぶ。しかし、金属も低温では脆性であり、脆性から延性に変わる温度を延性脆性遷移温度と呼ぶ。金属は中性子の照射を受けると、延性脆性遷移温度が上昇してきて、常温でも脆性になる。厚い金属製容器である原子炉圧力容器が脆性となってしまうと、事故時などに加わる圧力で割れてしまう可能性があり、原子炉の寿命を決定する最重要な要因とされてきた。その延性脆性遷移温度の変化を知るために、圧力容器には試験片が取り付けられ、ときどき取り出して試験をしてきた。その結果、2009年におけるデータでは、九州電力玄海原子力発電所1号機では延性脆性遷移温度が98℃、関西電力の高浜原子力発電所1号機では95℃となり、予測を上回っていた。