電子(エレクトロン)のさまざまな性質を利用する科学技術の一分野で、電子工学ともいう。特に電子のもつ運動エネルギー、位置エネルギーなどを利用して電気信号の発生、増幅、制御を行う素子、いわゆる電子デバイスを中心とする工学分野を指す。電気工学と対比させた場合、電気工学は発電、送電、電力の制御や応用(強電と呼ばれる)を扱うのに対して、電子工学の領域分野を弱電と分類して呼ばれる場合もある。電子デバイスそのものを対象とするばかりでなく、電子デバイスを利用した電子回路、それらを組み合わせた電子システムをも対象とする広い分野である。
1950年代前半までの真空管を対象とする電子管工業と、その後のトランジスタなどを対象とする半導体工業の発展は目覚ましく、電気通信、テレビジョン、コンピューター、IT(Information Technology)など、多くの応用分野を作り出している。また、光との相互作用を扱う分野は光エレクトロニクス(フォトニクスまたはオプトエレクトロニクスともいう)、機械工学ではメカトロニクス、医用関連ではメディカルエレクトロニクス、生体との融合分野ではバイオエレクトロニクスなど、他分野とエレクトロニクスが関連する広範囲な領域に発展している。