熱から電気を、電気から熱を取り出す現象を熱電変換といい、前者はゼーベック効果、後者はペルチェ効果と呼ばれている。熱電発電は、ゼーベック効果を利用し、熱電変換材料である熱電素子の一方を高熱源、他方を低熱源に接触させて、電位差を生じさせることで熱エネルギーを電気エネルギーに変換する発電方法をいう。熱電素子には、高熱源の温度が500Kまではビスマス・テルル系、800Kまでは鉛・テルル系、1000Kまではシリコン・ゲルマニウム系などの金属または半導体が使われている。しかし、鉛は人体に有毒であり、テルルは希少資源であることから、銅と硫黄を多く含むテトラヘドライト鉱物と同じ構造を持つ化合物の開発も進んでいる。
熱電素子は、可動部分がないために振動や騒音がない、長寿命で信頼性が高い、付帯設備が不要で省スペース、小型軽量であるといった特長がある。当初、人工衛星の電源や灯台など遠隔地での発電装置として使用されたが、人工衛星の電源の多くは太陽電池に、灯台の電源はディーゼルエンジンに置き換えられてしまった。しかし最近になって再び見直され、製鉄所や一般工場、乗用車から出る排熱、地熱や温泉などの未利用エネルギーを利用した環境に優しい発電システムとして開発が期待されている。