電源ケーブルを使わずに、機器に非接触で電力を伝送する技術をいう。ワイヤレス給電、無線充電などともいわれる。主な方式に、近接した二つのコイルの片方に電流を流すと、磁束によってもう片方に起電力(電流を生じさせる電位差)が発生する電磁誘導の原理を利用した「電磁誘導方式」、コイルとコンデンサーを使って共鳴(共振)回路を作り、電界もしくは磁界の共鳴現象を利用した「磁気共鳴方式」、電流を電磁波に変換しアンテナを介して送受信する「電波方式」とがある。
「電磁誘導方式」と「磁気共鳴方式」は、近傍界で電力のやり取りが行われ、モバイル機器や家電製品など民生機器、電気自動車などに利用されている。「電磁誘導方式」は、数十センチメートル以内の距離で最大電力150キロワットが送れ、送受電の両者に内蔵されたコイルの位置合わせがうまくいけば、70~90%の高い給電効率を得ることができる。一方、送受電の両者に内蔵コイルが必要となるために、機器を設計する上でスペースの制限を受けるだけでなく、位置がずれると効率が低下する。これに対して「磁気共鳴方式」は、送れる最大電力は小さいが、数メートル内であれば位置ズレを気にすることなく、機器を設計する上での自由度は高いといった利点がある。
「電波方式」は、電力の輸送効率が最も低いが、送電線を不要とする大規模な電力輸送に応用が検討されている。その応用例として、衛星の太陽電池で発電した電力をマイクロ波に変換し地上の受電基地(レクテナ)に送り再び電気に変換する「太陽発電衛星」がある。