あらゆる生物にあり、そのゲノム上の位置を転移(transposition)することのできる塩基配列で、可動性遺伝因子(動く遺伝子)とも呼ばれる。DNA断片が任意のDNAに直接転移するDNA型と、転写と逆転写の過程で主に自身のDNAを増幅させるRNA型がある。狭義には前者のみをトランスポゾンといい、後者はレトロトランスポゾン(retrotransposon)と呼ばれる。
トランスポゾンはDNA配列を変化させることで、様々な環境に適応できる多様性を獲得して、生物の進化を促進してきたと考えられている。一方、福山型筋ジストロフィーのようにDNA配列に変異を引き起こすことで疾患にもなり得ることから、もろ刃の剣でもある。
最近、治療用遺伝子を細胞に導入するベクターの代わりにトランスポゾン(ピギーバック・トランスポゾン〈piggybac transposon〉という)を利用した方法が開発され、外来遺伝子であるベクターのゲノムへの挿入を回避できることから、有用な遺伝子治療法と期待されている。