ナノとは10億分の1のことで、ナノテクノロジーとは、原子や分子の配列をナノメートルスケール(10-9m)で制御する技術のこと。この技術により、新しい性質や機能を持つ材料の創製が期待されている。応用の可能性としては、電子産業における高密度記録素子、高度情報処理デバイス、医療におけるナノマシンを利用した特定部位薬品注入やペースメーカーなどの埋め込み装置などがある。
将来性が期待される一方で、人が暴露するリスクも懸念されている。なぜなら、ナノスケールだからこそ生じる特殊な性質や生理活性が期待されているわけで、これまでの化学物質のリスク評価では予想していなかった影響が生じる可能性があるからである。さらに、医療分野の応用には倫理上の問題の検討も必要となる。ナノテクノロジーは開発と同時にリスク評価が議論されつつあり、科学技術の新しい開発のあり方を示す良い例になることが期待される。