1968年に熱媒体として使用されたポリ塩化ビフェニル(PCB)が製品の食用油「カネミライスオイル」に混入し、それを食べた人が皮膚障害(クロロアクネ)や手足のしびれ、肝機能障害、骨の変形、歯の異常や頭髪の脱毛、流産、がんに至る多岐の症状を訴えた食品公害事件。西日本を中心に1万4000人以上が被害を訴えた。食用油にはPCBが熱変性して生成したポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF、ダイオキシン類の一種)が含まれ、症状の原因はPCBよりPCDFの寄与が大きかったと74年に判明し、2001年になって国もダイオキシン類が主原因と認めた。責任企業のカネミ倉庫と被害拡大の責任を負う国を相手とする訴訟が1986年までに8件提起され、一時は原告が勝訴したものの、同年の全国統一民事訴訟第二陣の二審判決で、国に逆転敗訴となった。原告は勝訴の見込みがないことから訴えを取り下げ、国家賠償の仮払金の返還義務が生じた。しかし、すでに医療費などに使っていた原告は返還に応じ切れず、自殺者も出る事態となったため、2007年に国は仮払金の返還を免除する特別措置法を成立させた。また、カネミ倉庫は経営難から被害者認定の際の見舞金と医療費の一部支給以外の賠償金はこれまでほとんど支払っていない。12年9月、「カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律」が施行され、ようやく初の公的救済が立法化され、認定患者と同じ油を食べた同居の家族も患者と認定し、カネミ倉庫は医療費と年5万円の年金を支払い、国は健康実態調査名目で年19万円を支給することになった。新法で認定された患者は、13年12月31日現在で264人にすぎず(全体では2246人)、検診の機会が少ない、審査がずさんなどの批判がある。