ビフェニルの水素が、塩素で置換された一連の有機塩素化合物の総称で、塩素置換数が1~10個の10種の同族体が存在する。また同一塩素置換数でも置換の位置の違いにより多数の異性体が存在し、全体で209種の同族異性体(コンジェナー)が存在する。1881年にドイツで初めて合成され、熱安定性と電気絶縁性に優れており、絶縁油としてトランス、コンデンサーなどの電気機器に、また熱交換の媒体やノーカーボン紙などにも使用されていた。日本では1954年から鐘淵化学工業がカネクロールの商品名で製造を始めたが、68年、それが食用油に混入し、食べた人が皮膚障害(クロロアクネ)、肝機能障害などの健康被害を受け、カネミ油症事件が起こった。その安定性により地球規模の環境汚染が起こり、また生物蓄積性と毒性を有することから、2001年5月に採択された「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(ストックホルム条約)により、残留性有機汚染物質(POPs)にも指定されている。さらに一部のPCBコンジェナーは平面型の分子構造をとり、ダイオキシン類と同じ毒性を有する。これらは、ダイオキシン様PCBあるいはコプラナーPCBと呼ばれ、ダイオキシン類として扱われている。日本では1973年に製造、輸入、使用が禁止されてから、長らくPCB廃棄物は保管を求められてきたが、2001年に「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」が制定され、現在では日本環境安全事業株式会社が分解処理を担っている。しかし、当初目標とした16年までの処理完了は困難な状況である。