量子鍵配送(QKD ; quantum key distribution)の安全性を保証する条件を求める理論。種々考案されている量子鍵配送法ごとに条件を明確にする必要があるが、条件もそれを求める理論の難易度もさまざまである。まず、光源、変調器、光伝送路、受光器、復調器などの部品を完全無欠と仮定する理想状況における安全性証明が必要である。次に、現実の雑音・誤差・光損失を考慮するのが安全性証明の目的であるが、どの部品のどのような不完全性を考慮するかで、段階は多々ある。さらに、盗聴者の能力としてどんな一般的手段(たとえば複数パルスに量子計算を施すこと)も仮定した「無条件安全性(unconditional security)」や、個々のパルスへのアクセスしかできないとする「個別攻撃」を仮定することなど、いろいろな理論がある。理論の進歩により、それまで安全でなかった方式や装置が安全であることがわかるようになるほか、安全保証条件が緩和されてさらに高速・長距離通信が可能となるため、量子暗号実用化の本質を担う理論である。普通のレーザー光を用いたおとり信号付き鍵配送(decoy QKD)やパラメトリック下方変換のゆらぎをおとりに使う方法が、2007年、大阪大学の量子情報グループによって提案され、量子鍵配送の性能向上にこの理論が一役買っている。