最適解を探すためにすべての場合を計算するのでなく、熱ゆらぎを人為的に付加して徐々にゆらぎを減らす(アニーリングする)ことにより最適解に近づくシミュレーテッド・アニーリング(simulated annealing)の一種で、加えるゆらぎとして、熱ゆらぎではなく量子ゆらぎを用いるもの。複雑な最適化問題をポテンシャル(複雑な山谷)の最も低い位置を探す問題に書き換え、そこにボールを放り込み、古典的熱雑音で揺らすことにより最低地点に落ち込ませるといった確率的計算手法は1985年ごろよりボルツマンマシン(Boltzmann machine)として知られており、シミュレーテッド・アニーリングとなってきた。古典的熱雑音の代わりに、量子トンネル効果で山を越えて隣の谷まで揺らすのが量子アニーリング計算である。ここ10年ほどで研究が進展しており、たとえば古典アニーリング計算より速いことがわかっている。当然、これを通常のコンピューターの中でシミュレーションするよりは実際の量子物理系に計算させる方が速いことは明らかであり、それに向けた実験研究も始まっている。さらにボース・アインシュタイン凝縮系を利用する方法も提案されている。これはトンネル効果とは別に、粒子の識別不可能性を利用するものである。なお識別不可能性(indistinguishability)とは、電子や光子などの素粒子やクーパー対やエキシトン(励起子)などの準粒子は波長やスピン等の値が全く同一のとき、「電子1」「電子2」と名前が付けられないことをいい、古典的粒子と非常に異なった振る舞いをする。